REACH Online 2014オンライン調査にご参加いただき、誠にありがとうございました。

この調査は、2014年8月28日から2014年12月15日まで実施いたしました。

研究参加者数は過去最多の20,821人(有効回答数)となり、アンケートにご回答いただくと共に、ご感想やご意見もたくさん頂戴いたしました。

また、イラストレーターのSUVさん、一十さんとのコラボにより、季節ごとにバナーデザインを変え、さまざまなインターネットサイト、SNS、アプリを通じて研究に参加してくださる方を募集しました。ご協力いただきました関係者のみなさまにも感謝申し上げます。

この度、みなさまにお答えいただいたアンケートの集計が終わりましたので、以下に、ご報告いたします。これからもREACH Onlineをよろしくお願いいたします。この場をお借りしまして、改めてお礼申し上げます。

平成26年度 厚生労働科学研究費補助金 エイズ対策政策研究事業
個別施策層のインターネットによるモニタリング調査と教育・検査・臨床現場における予防・支援に関する研究
研究代表者 日高 庸晴(宝塚大学看護学部 教授)

1. 研究に参加いただいた方

  • 研究参加者の平均年齢は32.2歳でした。最も多い年代は20代で、全体の40.1%を占めています。次いで30代(30.5%)、40代(19.8%)、10代(5.3%)、50代以上(4.3%)と続きます。 最年少11歳、最年長71歳と、幅広い年代の方から回答をいただいています。
  • 現在の居住地は47都道府県すべてに分布しており、日本全国からご参加いただいたことになります。 地域別で分類すると最も多かったのは東京都(24.7%)で、次に東京を除いた関東地方(21.6%)、大阪府(9.8%)と続きます。都市部から多く回答をいただきました。

REACH Online 2014 研究参加者の基本属性(有効回答数20,821人)

●居住地

●年齢分布

  • 最終学歴は大学在学中もしくは卒業の方々が全体の41.4%を占めており最多でした。次いで高校在学中もしくは卒業の方々で、25.1%となっています。
  • 自認する性的指向は男性同性愛(ゲイ)の方が最も多く、全体の79.8%を占めています。次いで両性愛者(バイセクシュアル)の方が14.5%で、ほぼ例年と変わらない結果でした。

2. カミングアウトしてる?

  • 自分の性的指向について、親にカミングアウトしていない方は76.2%でした。
  • 両親にカミングアウトした方は全体の10.0%、母親のみにカミングアウトした方は8.5%でしたが、父親のみにカミングアウトした方は0.8%とかなり低い割合でした。

あなたは親に自分の性的指向をカミングアウトしていますか?

  • 家族以外の異性愛者に自分の性的指向をカミングアウトした方は、全体では49.5%となっています。REACH Online 2012では40%でしたから、若干増えていると考えてもよいかもしれません。
  • 年代別でみると、10代、20代の方は55%以上の方が家族以外の周囲の人にカミングアウトしていますが、40代、50代以上でカミングアウトした方は35%程度にとどまっています。 若い方のコミュニティでは、セクシュアルマイノリティに関する理解がより進んできているのかもしれません。
  • また、家族以外の方に性的指向をカミングアウトした人数についてもたずねたところ、10人以上にカミングアウトした方が最も多く42.4%でした。次いで多いのが2~3人(19.2%)、4~5人(16.3%)でした。

あなたは家族以外の異性愛者(周囲の知人、同僚など)にカミングアウトしていますか?

家族以外の異性愛者(周囲の知人、同僚など)にカミングアウトしている人の割合(年代別)

3.HIV検査の受検率

  • これまでにHIV検査を受けたことがある方は全体の54.7%でした。回答いただいた半数以上の方が、HIV検査を受けたことがあることがわかります。REACH Online 2012の調査では41.0%だったので、HIV検査の受検率は徐々に高まっていると考えられます。
  • 過去1年以内にHIV検査を受けたことがある方は全体の32.6%で、こちらもREACH Online 2012の調査(22.4%)から上昇傾向にあります。
  • また、過去1年間にHIV検査を受けた方には、どこで検査を受けたかについて回答いただきました。
    最も多いのは保健所や保健センターで、過去一年以内にHIV検査を受けた方の中で63.8%を占めています。 次いで病院・診療所・クリニックの36.5%となっています。 「保健所や保健センター」と「病院・診療所・クリニック」で年代別の利用率を比較すると、若い人ほど利用率の差が大きいことが示されました。10代や20代では「保健所や保健センター」が70%以上、「病院・診療所・クリニック」が25%前後となっているため、差が40%以上ありますが、30代では20%程度の差、40代では10%程度の差と、差が縮まっていき、50歳以上の方ではほぼ50%ずつとなっています。

過去1年間にHIV検査を受けた検査場所はどこですか?(年代別)

4.HIVの身近感・HIVについての知識

  • 全体の24.8%の方がHIV陽性の友人がいると回答しています。
    回答していただいた方の約4人に1人は、HIV陽性の友人がいるとわかります。 この質問は、年代による差が顕著でした。
    HIV陽性の友人がいると答えた人は10代の方ではわずか4.3%、20代の方も13.9%にとどまっていますが、30代以上の方では、おおむね35%前後の方がHIV陽性の友人がいると回答しています。
  • HIVに関する知識について、いくつか回答していただいています。
    「現在、日本のゲイ男性の間でHIV/エイズが流行していると思いますか?」という質問では、正解の「流行していると思う」と答えた方は全体の70.7%でした。
    30代、40代の方は75%以上の方が正答していますが、20代では64.2%、10代では51.0%まで落ち込みます。また、10代・20代の方は「わからない」と回答する方も多く、10代では36.2%、20代では27.6%の方が「わからない」と答えています。
    地域別では北海道や東北では「わからない」と答えた方が25%を超えていた一方で、誤答が少なかったのは沖縄県(4.3%)、大阪府(5.5%)、九州(6.3%)でした。

現在、日本のゲイ男性の間でHIV/エイズが流行していると思いますか?(年代別)

  • 「もしHIVに感染していたら、献血をしたときに教えてもらえると思う」という設問では、正答の「そう思わない」と答えた方は全体の65.4%で、知識を問うその他の設問と比較すると、正答率が低い傾向にありました。
    特に10代では、30%以上が誤答の「そう思う」と答えているほか、4人に1人以上が「わからない」と回答しています。 正答率が比較的高かったのは40代(75.4%)と30代(70.1%)でした。
    地域差は大きくはありませんでした。
  • 献血では、検査目的によるHIV感染の心配がある方の献血が無いように、HIV検査の結果を本人に通知しないことになっています。輸血の必要な患者さんにより安全性の高い血液や血液製剤を供給するための決まりですので、検査結果を知るためには保健所や病院等での検査が必要になります。
    (参考サイト:HIV検査マップ Q&A
  • HIVに関する知識をたずねる質問とあわせて、「過去6ヶ月間に、ゲイ同士でHIV/エイズについて話題にしましたか?」とたずねました。話題にしたと回答した方は全体の50.1%で、年代による大きな差はありませんでした。
    地域別でみると、話題にしたと回答した方が半数以上になるのは大阪(56.6%)、東京(55.7%)愛知(53.2%)の都市部のみでした。一方、話題にしないと回答した方は、最も多いのは九州(53.5%)で、東北(52.3%)、北海道(49.9%)、北陸信越(48.5%)と続きます。地方の方が話題にされづらい傾向があるようです。

もしHIVに感染していたら、献血をしたときに教えてもらえると思う(年代別)

過去6ヶ月間に、ゲイ同士でHIV/エイズについて話題にしましたか?(年代別)

5.コンドームの利用状況

  • HIV感染を予防する上で重要な、コンドーム利用の状況についても回答いただきました。
    挿入(タチ)のみの方、被挿入(ウケ)のみの方、挿入・被挿入の方(いわゆるリバ)を合わせた全体の31.2%の方は、アナルセックス時にコンドームを常時使用していると回答しています。
  • REACH Online 2008の調査では35.0%の方が常にコンドームを使用していると回答していたことから、コンドームの常用傾向はやや減少気味といえるかもしれません。特に、10代の方と50代以上の方ではコンドームの常時使用率が30%未満です。

コンドーム利用状況

  • 地域別でみると、コンドームの常時使用率が高いのは沖縄県(36.1%)、愛知県(33.2%)、近畿(32.9%)、東京都(32.5%)と続きます。逆にコンドームを常時使用していない方の割合が高いのは、北海道(66.0%)、九州(64.5%)、東北(62.6%)、大阪府(62.2%)が60%を超えています。
    HIV知識について全体的に10代の方は「わからない」と回答する割合が高く、情報を得られていない状況が明らかになりました。

6.学校での経験

  • これまでの学校生活で同性愛に関して「一切習っていない」と回答した方は61.4%で、REACH Online 2008の76.1%、REACH Online(モバイル版) 2011の71.1%と比較すると減少傾向にあります。
  • 一方で、「否定的な情報を得た」方も20.0%であり、REACH Online 2008の10.2%、REACH Online 2011(モバイル版)の11.9%よりも増加しています。今回の調査において「異常だと習った」方と「否定的な情報を得た」方を合計すると25.7%にのぼり、4人に1人は学校から適切な情報を提供されていなかったことになります。

これまでの学校生活(小・中・高)で、同性愛についてどのような情報を得ましたか?(年代別)

  • 異性間のエイズ予防教育を受けたことがある方は全体の49.6%で約半数を占めますが、男性同性間のエイズ予防教育に関しては授業があったと回答した方は、14.1%まで落ち込みます。
  • 性同一性障害に関する授業の有無についても、同様に授業を受けたことがある方は15.3%にとどまりました。これらの授業経験は年代が若いほど授業を受けた割合は高くなる傾向にありますが、10代でも、異性間エイズ予防教育については86.8%の方が授業を受けたことがあるのに対し、男性同性間の予防教育については30.8%、性同一性障害に関する教育については32.8%でした。

これまでの学校生活(小・中・高)で、以下についての授業がありましたか?

●男女間のエイズ予防に関すること

●男性同性間のエイズ予防に関すること

  • 小・中・高校で不登校を経験したことがあるかお答えいただいたところ、全体の17.6%の方が不登校になったことがあると回答しています。 年代が若いほど不登校経験の割合が高くなりますが、年代別で最も少なかった50代以上の方でも10.3%の方が不登校を経験しているとお答えいただきました。
  • いじめの被害経験についてお答えいただいたところ、あると答えた方は全体の55.7%でした。
    年代別では、30代、40代が6割を超え、最も少ない10代でも43.8%にのぼりました。
  • また、いじめの被害経験がある方に「ゲイ・バイセクシュアルであることがいじめに関係していたと思いますか?」という設問にもお答えいただきました。
    いじめを受けたことのある方のうち34.3%の方がいじめと自らの性的指向に関係があったと回答していたことから、いじめの被害経験者の3人に1人は性的指向と関係があったと考えていたと言えるでしょう。

これまでの学校生活(小・中・高)で、いじめられたことがありますか?

ゲイ・バイセクシュアルであることがいじめに関係していたと思いますか?

7.悩みごと・抑うつ

  • 現在、どんな悩みを抱えているか回答いただきました。
    最も多かったのは仕事に関すること(67.2%)で、自分の老後のこと(48.6%)、経済的問題(48.3%)、自分の健康のこと(40.3%)、外見の衰え(35.0%)、恋人がいないこと(34.0%)と続きます。
    特に地域差がみられたのは、結婚のプレッシャーと家を継ぐことでした。結婚のプレッシャーがあると回答した方が多い地域は北陸信越(28.4%)、東北(28.2%)、九州(27.5%)で、少ない地域は東京都(18.3%)、大阪(18.6%)、北海道(19.2%)でした。
    家を継ぐことについて悩んでいたり心配していると回答した方が多い地域も、東北(22.2%)、北陸信越(20.6%)で、少ないのは北海道(9.3%)、大阪府(9.8%)、東京都(11.7%)でした。

現在、悩んでいることや心配なことはありますか?(上位5位まで)

仕事に関すること 67.2%
自分の老後のこと 48.6%
経済的問題 48.3%
自分の健康のこと 40.3%
外見の衰え 35.0%
  • 抑うつ状態か簡易にスクリーニングする「K6」という設問群にお答えいただきました。
    その結果、全体の52.9%と半数以上の方が陽性という結果となりました。 平成25年の厚生労働省による全国調査では陽性は27.8%なので、本調査での陽性の方は約2倍とわかります。
    年代別でみると、若年層で陽性の方が多い傾向にあります。特に具体的な対応が望まれるとされる重症群は、全国調査では9.8%ですが、本調査の10代の方では21.5%に上ります。
  • 過去に、気分の落ち込みや不安などのメンタル的な症状によって、カウンセリングや医療機関を利用したことがあるかお答えいただきました。
    全体でもっとも利用率の高い施設は心療内科(16.7%)で、精神科(9.4%)、心理カウンセリング(8.7%)と続きます。
    全体でみると心理カウンセリングは、その他の施設と比較して利用されない傾向にありますが、10代だけは心理カウンセリングの利用率がその他の施設よりも高い結果となりました。このような施設別の利用率は、過去6カ月のみに絞った場合でも同様の傾向がみられます。

メンタルヘルスに不調が見られる方の割合(年代別 K6スコア)

8.喫煙習慣、飲酒習慣

  • 喫煙・飲酒習慣についてお答えいただきました。
  • 煙草は「時々吸う」人は5%程度の少数派で、「吸わない」と答えた方が最も多く全体では63.8%を占めていました。
    年代別では10代の喫煙率が低いこと、「毎日吸う」と答えた方が30代以降では35%程度であるのに対し、20代では26.1%と少ない傾向にあります。
  • 飲酒は「時々飲む」方が最も多く、全体では61.2%を占めていました。
    年代別でみると、「毎日飲む」と答えた方は年代が上がるにつれて増えていく傾向にありますが、「飲まない」と回答した方の割合は10代(51.7%)の次に50歳以上(33.0%)で高く、年配の方は散発的に飲酒する方が少なく、若年層よりも毎日飲む方と全く飲まない方に分かれやすい傾向にあるようです。
    地域別では、「飲まない」と答えた方の回答割合に地域差がみられ、「飲まない」と回答した方の割合が高かったのは北陸信越(32.2%)、東北(32.0%)、中四国(31.9%)で、逆に「飲まない」と回答した方の割合が低かったのは沖縄県(19.3%)、東京都(20.8%)でした。

喫煙習慣

飲酒習慣